このエントリーをはてなブックマークに追加 2015年1月21日 | スポーツ, タイムライン, 取材, 筋肉バカドットコム, 遠藤大次郎 |

【アンプティサッカー】元日本代表「根本大悟」フィジカルで戦える。それがアンプティサッカーの世界だった

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■2014年12月27日 11:00~

(場所:神奈川県 横浜市)

 もしある日、事故や病気で足や手を失ったとしたら、自分はいったいどうすればいいのか。

もし戦争のある国に生まれていれば、地雷という事故があり、アフリカという国であれば猛獣に襲われ足や手を失う事がある。

そしてそのような現実が、自分はもちろんの事、子供や愛する家族に訪れたとしたらどう向き合えばいいのか。

そんな時、足や手を失った時にできるスポーツ、アンプティサッカーという世界がある事を筋肉バカは知る。

 

【アンプティサッカーとは】

 アンプティサッカー(amputee soccer = 切断者サッカー)とは、主に上肢、下肢の切断障害を持った選手がプレーするサッカーである。

競技は国際アンプティサッカー連盟(WAFF)が統括しており、日本でのアンプティサッカーは日本アンプティサッカー協会(JAFA)が統括する。

従来のような障害者スポーツに必要とされた専用の器具を必要とせず、日常の生活やリハビリ・医療目的で使用しているクラッチ(主にロフストランドクラッチ)で競技を行うため、足に障害を持つ人々にとっては、最も気楽に楽しめるスポーツとして海外では急速に普及・認知度が高まっている。

 

  このアンプティサッカーについて調べていると、元日本代表の根本大悟さん(40才)が、神奈川県でトレーニングをしているという情報をキャッチする。

根本さんの得た経験や今もなお、貪欲にトレーニングを求めている理由が知りたい。

さっそく筋肉バカは取材を申し入れ現地へと向う事にした。

 

■2010年 日本VSフランスの試合(アンプティサッカーワールドカップアルゼンチン大­会)

※根本大悟さん(背番号9)もこの試合に日本代表として出場している。

 

【アンプティサッカーのルール】

①フィールドプレーヤーは下肢切断者、ゴールキーパーは上肢切断者が担当する。

②フィールドプレーヤーは移動のためにクラッチを使用するが、このクラッチをボール操作に使用することはできない(故意に触れた場合はハンドとなる)

③ゴールキーパーはペナルティエリアから出ることができない

④タッチラインをボールが割った場合は、スローインではなくキックインでゲームが再開される

⑤フィールドプレーヤーは転倒した状態でボールを蹴ることはできない

⑥オフサイドルールは適用しない

⑦国際大会での試合時間は前後半25分の、計50分間で行われ、その間に10分間のハーフタイムがある

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 アンプティサッカー、根本大悟さん(左) パーソナルトレーナー(右)

 

■プロフィール

根本大悟(40歳)、元日本代表選手。

平日は会社員として働きながら、現在もアンプティサッカーの日本レベルを上げる為トレーニングを研究している。

 

現地に到着すると、真剣にトレーニングに向き合う根本さんに会う事ができた。

手前に見えている根本さんの左足が義足なのが分かるだろうか。

近くで邪魔にならないようしばらく見学させていただき、トレーニング後に根本大悟さんにお話を伺わせて頂く事にした。

 

 【トレーニング中】

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トレーニング前半部分。片足で立ちトレーナーにバランスのずれを確認してもらっている様子。

 

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一見ただの腕立てのようにも見える。

しかし確認しているフォーム精度は高くプルプルと震える根本さん。

 

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見るからにキツそうだが、ぶら下がりながら反動をつけず各部位を的確に使い足を90度まで交互に上げ下げしていく。

 

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アンプティサッカーで戦う時に重要な技術になる『空中移動の精度』を高めるトレーニング。

約2時間にも及ぶ強化トレーニングを行い、一息ついた根本さんにお話を伺った。

 

【義足になった経緯】

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(当時の事や今取り組んでいる事についてなど常に丁寧に話してくれる根本さん)

 「18歳の時にオートバイに乗り交通事故に合いました。状況は細菌感染を起こしやすい、開放骨折でした。」(根本さん)

入院するも脚に菌が入ってしまい左足を切断し義足となった。

 

【36歳の時、アンプティサッカーに挑戦】

 「負けず嫌いだったし、女の子にもモテたかった」(根本さん)

20歳からスノーボードに挑戦し、その後バトミントンにも挑戦し全国大会へと出場していく。

さらにスキューバダイビングや陸上など様々なスポーツにも興味を持つ。しかしどうもしっくりこなかった。

今から4年前の当時36歳になっていた根本さんが、義足屋でアンプティ―サッカーというものがあるから一度観てみないか?と声をかけられたという。

頑張れば日本代表選手になるチャンスもあるぞとも言われた根本さんは、1度観に行く事に。

その時の根本さんは今まで見てきた障害者スポーツにある1つの疑問を持っていた。

それは道具の性能によって結果が変わってしまう事である。

 

【道具の性能が勝敗に影響する事に違和感】

 「たとえばバトミントンであれば高性能な義足を使うことでステップの精度が上がります。

陸上においてはチーターのような特殊な専用義足をつけて走る事になり、いつも生活で使っている義足では到底良いタイムは出せずとても戦えません。当然別途費用がかかり、保険も適用されないのです。」(根本さん)

 

「仮に身体能力の高いアフリカ人がいても高性能な義足をつける事は高価(20~30万)でありできない。そこに違和感を感じてしまったのです。」(根本さん)

 出来るだけ誰もが同じような条件で戦えるスポーツ(競技)を求めていた根本さん。

そんな時に出会ったアンプティ―サッカーというスポーツは、身体を支える杖(クラッチ)以外何も必要なかった。

 

「当時の選手の動きをみて、こんな事ができるのかと単純に驚きました。そして道具ではなく、フィジカルや戦術で戦える理想的なスポーツはこれだと思いました」(根本さん)

たとえどんなに杖(クラッチ)の性能を変えようとしても、重量などその改良範囲は限りなく小さい。

フィジカルと戦術で戦うのみ。

アンプティ―サッカーは根本さんが求める世界だった。

 

【日本代表としてアルゼンチンで体験した感動】

  「(日本代表になり)ワールドカップでアルゼンチンに行ったときの話です。街を歩くと子供が沢山集まってきて、サインを求めて大勢来たんです。アンプティサッカーの日本代表選手でしょ!素晴らしいプレーだったよ!と声をかけてくれました。」(根本さん)

 

 日本ではいわゆる障害者の人。辛く頑張っている人。

というようなコミュニケーションに一線を置くような感覚が根強い。

しかしアルゼンチンで見た光景は違ったという。

他のスポーツとまったく変わらず国際舞台で戦うヒーロー”アンプティサッカーの代表選手”という選ばれたものという尊敬された扱いだったのだ。

その体験をしたことで、アンプティサッカーに関わる日本選手として、もっと技術含め高い意識を持っていこうと根本さんは強く決意したのだという。

 

【障害者スポーツに対する報道のされ方】

 「障害者スポーツに対する報道のされ方の多くは、選手の彼らはこんなにも頑張っている。という感じです。

そうではなく、たまたま足に障害があって、その時にアンプティサッカーを選択したというだけである事。

その条件の中で最も高いレベルを目指してるアスリート達であること。

そして世界のレベルが高くそこを目指して戦っているという事。それをもっと多くの人に知ってもらいたいですね。」(根本さん)

 

 

【義足であることの誇り】

 「日本の場合、まだまだアンプティサッカー観に来て欲しいなんです。そうじゃなくて、アンプティサッカー面白そうだから観に行ってみようか。と思ってもらえるように選手から意識を変えていかなければいけない。」(根本さん)

さらに根本さんは力強く続ける。

 

「僕もアンプティ選手になりたい。と健常者の子供が言った時、アルゼンチンの選手が、こんなこと言っていたんです。

ごめんね、普通に生まれたのではこの競技はできない。特別なチケットが必要なんだ。と。

僕たちは特別なチケットを持っているからこのアンプティサッカーというスポーツが出来ているんだよと。

その特別なチケットというのは義足であることです。

そしてアルゼンチン選手から溢れる誇りを感じ、自分も(選手として)そこを目指したいと思いました。」(根本さん)

 

【40歳でも変わらずトレーニングを続けている理由】

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 「自分は選手としては限界が出てくる年齢です。

しかし将来、アンプティサッカーの成長に活かせるような効果的なトレーニングをトレーナーさん協力の元、研究しているのです。

トレーナーの舟橋さんには感謝していますし、アンプティサッカートレーニングの先駆者にもなってもらいたいです。

この研究したトレーニングの財産はやがて後に続く選手たちに継承し、日本のプレーの質が高い位置からスタートでき、世界トップレベルまで上がっていく事に役立てばと思っています。」(根本さん)

研究経緯について、共にトレーニングを研究しているトレーナー舟橋さんにお話を伺った。

 

 【向上に必要なものはサッカーとは別もの】

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 トレーナー舟橋立二さん(GBR(株)ADP代表)

「根本さんからアンプティサッカーのパフォーマンス向上の依頼をされた時、サッカー目線で試合を観戦しましたが、

これはサッカーではなく、アンプティサッカーという別競技だと気付かされました。

つまり、そのアンプティのパフォーマンス向上に必要なものはサッカーとは別ものであり、更に障害者スポーツという枠組みではなく、アンプティサッカーというというスポーツ。そこから根本さんと一緒にスタートしました。

また多くの選手がクラッチに頼っていて、体のあらゆるところに過負荷がかかっていて疲労や傷害の原因になっていることも分かりましたので、クラッチは単なる補助として、まずはクラッチがなくても正しく体を使えるようになるところから始めました。

根本さんの努力もあり、今では普段の歩きや階段の昇り降りも彼が義足だとは気づかれないレベルまで来ました。」(舟橋さん)

 

【足が無くなって得たもの】

 もし義足になったら生活や仕事などの不安とどう向き合っていけばいいのか。

すると根本さんは仕事において自分は有利に感じているという話をしてくれた。

「義足であれば初めて会った人に覚えて貰いやすいです。顔を覚えて貰えること、これは仕事においても有利になります。

『根本さん?あ、足の無い人でしょ?』それでいいのです。これが生きていくうえで何よりも大事な事です。

自分はそういう特徴をもっている。だから隠さない方が良いし、強みとして大事にしています。」(根本さん)

 

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 根本さんはあらゆる面を強みに変える考え方や知恵を持っている。

そして、この考え方や知恵は10代の義足選手達にも伝えており、日常生活で自分に自信が持てるようにアドバイスをしているという。

 

根本さんは常に日本アンプティサッカーの未来を見ている。

「正式競技になるのは難しいと思いますが、もし2020年のオリンピックに今教えている子供たちが国立のピッチへアンプティサッカーのプレイヤーとして立ち、前座試合などとして多くの観客の前でプレーすることができれば最高ですね。」(根本さん)

 

 日本におけるアンプティサッカーの意識がより高くなっていければ、

とその鍛え上げられた脚の筋肉(大腿四頭筋)と共に根本さんは力強く語ってくれた。

 

(文:遠藤大次郎 写真:筋肉バカドットコム)

 

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