【騎手の世界】筋量は維持しサウナで体重コントロール。船橋競馬「川島正太郎さん」と「濱田達也さん」に訊く
(左:川島正太郎さん 右:濱田達也さん)
■2014年12月2日 17:00~
(場所:千葉県船橋市若松1-2-1)
【騎手の世界】騎手に必要な筋肉。そして女性騎手が苦悩した筋トレ問題とは
前回の取材後、筋肉バカは千葉県の船橋競馬場へと向かっていた。
筋肉目線で船橋競馬のレース後、騎手さんの取材をさせて頂けることになったのだ。
実際にこの目で、この眼輪筋で馬の迫力と騎手の身体の使い方を観てみたい・・・。
バーピーを10回繰り返した後、その飛び跳ねた勢いを使って前転し電車へと飛び乗った。
■京成電鉄:船橋競馬場駅
駅の名前がそのままなのも凄いが、電車を降り改札上部にあるグリーン色の看板が目に入ってくる。
“船橋競馬場へ。”
さらに、“歩道橋を渡りまして直進徒歩5分”。と赤字で書いてある。
まるで駅と競馬場が一体化しているような造りなのに驚いた。
改札を出るとライトアップされたナビがある。そのまま左へと曲がる。
階段を下りる筋肉バカ。
ついに駅の外に出た。歩道橋はどこにあるんだ?という感じだが、とりあえず直進。
30mもしないうちに歩道橋を発見。これを渡ってからそのまま直進5分。
歩道橋を渡りきってそのまま直進していくと交差点にぶつかった。
さらに直進する為、横断歩道を渡る。
渡ったら目の前が競馬場であった。
体感的には3分程度。5分もかからなかった気がするほどに近い。
駐車場近くにはこのような楽しみ方の看板が設置されている。なんて分かりやすい説明なのだろうか。
さっそく競馬場内に入ってみる事にした。
入口を抜けるとすぐ目の前でパドックが行われていた。
東京ディズニーランドでいうと、ゲートを抜けたらミッキーを記念撮影ができる花が広がる広場が目の前に登場したような感覚だ。
すごい。カッコイイ馬が沢山動いている・・・。(震え)
左の方と奥の方ではパドックをチェックしている観客たちが沢山いた。
ちなみに今日は平日の月曜日である。きっと相当な競馬好きに違いない。
さて、パドックが終わると、馬券を買うためにモニターの前に集まり出す観客たち。
目的はもちろん馬券の購入。
ふむふむ。と熟考しているのが伝わってくる。人によってはこの予測で今晩のおかずが何になるか決まるに違いない。
筋肉バカも競馬のレースを体験することにした。
【前編:競馬レースを体験】
入場料100円でレースを観る事ができ、馬券を買う事もできる。
このレース予測も全くなしの状況ではあったが、体験するべくせっかくなので適当な番号を4つ選んでみることにした。
馬券は2と3と4と13の単勝。
単勝とは1着で来る馬を当てるという買い方。つまりこの場合、「当たりが1つあるか」又は「すべて外れるか」のどちらかになる。
200円で4口使ったということは合計800円の支払い。
つまり、仮にどれか当たっても、4倍以上の配当が無ければ、マイナスになるということ。さて、運命はいかに。
投票締め切り1分前。人気の投票が掲示板に表示されている。人気は1と6と10の組みあわせ。
もちろん人気の馬は沢山の人が買っている為、配当が下がる。
今回購入した2と3と4と13であり、基本多くの馬券購入者はノーマーク。
つまり大穴であるため当たれば4倍以上の配当が期待できるのだ。
という事で、今回のレースは11Rの1600m。夕日が眩しい午後16時。
風が・・・気持ちいい。
ここが1階スタンド。
この位置が最も馬が走るレースコースに近くその迫力を目の前で感じ事ができる。
後ろを振り返ると、コース全体を見渡せる2階席や特別席の観客が見える。
それぞれ好きな場所で観戦中だ。
いよいよ馬がゲートに入っていく姿がモニターに映し出された。はじまるぞ~・・・。
左を向くと、端っこの方にスタートゲートがあるのが分かる。あそこがスタート位置だ。
もちろん端っこにいけばスタートする瞬間が至近距離で楽しめるのだが、今回は加速したトップスピードとゴールの瞬間を観たいのでコーナー前にて観戦。
そうこうしていると・・・・。
ついにスタートした!
左手にいる観客のおじさんは物置のように微動だにしていないが、
ゲートから勢いよく馬が全力で飛び出して熱気がこちらに向かってきたぞ!
ドドドドド・・・・・!!!くるくるくる・・・。
ドドドドド・・・・・!!!くるくるくる!!
ドドドドドーーーーッ!!!
きたぞきたぞきたぞーーーーー!
きたーーー!馬の全力通過の迫力きたーーーーーーー!
ドドドドドーーーーッ!!!
目の前を一瞬で通過し夕日を浴びながら第一コーナーに突っ込んで行った馬たち。
いったいなんだったんだ、今のは・・・。
レースはここからが勝負。遠くの方で馬が走り続けているのが見えるだろうか。
ここから順位がどう変わっていくのかが面白い。きっと2階席などからは競い合う状況が良く見えるはずだ。
モニターで状況を確認。
さぁゴールに1着の馬がやってきた!ぶっちぎりで速い!勝利を決めたのは、10番の馬だ!
そしてそのあとに接戦でもつれながら3頭もまとめてゴール!
ちなみに近くにいた大学生っぽい男性グループがおり、予想がギリギリで当たりそうだったらしく終始絶叫していた(笑)
結果は、10-6-1 のようだ。購入されていた人気通りのような結果。
やっぱ馬券買っている人たちは見る目が肥えている証拠のようだ。
※適当に購入していたせいで単勝の馬券4口は見事に全て外れた。(小声)
【後編:騎手さんへの取材】
■川島正太郎さんと濱田達也さん
レースの興奮を味わった後、2名の騎手さんにお話を伺わせて頂く事になった。
対応頂いたのは船橋競馬で活躍する現役の騎手(ジョッキー)さんである。
騎手はいったい何を考えながら自らのカラダの管理をしているのだろうか。
筋肉バカはメモ帳を取り出し事務所へと入らせて頂いた。
■馬に乗ることが筋トレになっている
日々馬に乗っている事がすでに全身運動になり筋肉を使っている為、
濱田さんはウェイト器具を使ったような筋トレはしていないとのこと。
筋肉は脂肪よりも重い。だから多くの筋肉を身に着けてしまう事は避けたいという理由もある。
腹筋など自身を含めて騎手の多くは自重トレーニングを重視しているはずという。
■最も気にしている筋肉部位は体幹
体幹を中心として、脚、腕を大事にしていると川島さん。
大きな力ではなく全身の筋バランス、そして体重移動で日々レースを戦っているとのことだ。
馬の上で身体を思った通りのタイミングで、コントロールする技術。その為に必要な筋肉部位は全て意識している。
それでは馬に乗るシーン以外で具体的にどんな事をしているのかを教えて頂くことにした。
■バランスボールの上で馬に乗っている姿勢をとる練習
川島さん談の中で先輩ジョッキーがバランスボールの上に脚だけで乗る練習をしているとのこと。
またはハシゴ状のテープや棒を地面に敷き、ラダートレーニングも行っているらしい。
バランスボールで馬に乗るような事をすれば脚の筋持久力と全身のバランスアップが期待でき、
ラダートレーニングもバランスと連動した動きとしての下半身の強化が期待できる。
参考:ラダートレーニング≪初級編≫
■バランスボールの上に脚だけで乗る練習イメージとは
バランスボールにどのような姿勢で乗っているのか、川島さんに再現して頂いた。
これが馬に乗るような体勢。
そしてそこから馬を操作するときの腕の動きなどを組み合わせたりして、体勢をキープしていく。
これを先輩騎手はトレーニングの1つとしてバランスボールの上で行っているという。
川島さんに目の前で再現をして頂いたが、この体勢をピタッ、ピタッと動き全くブレていなかった。
平地でこの姿勢を作って動くことは楽勝とのこと。さすがプロの騎手である。
馬が走る衝撃の中でこの体勢をどれだけシッカリとキープしていく事が重要になるとのこと。
話を聞いているだけで脚の疲労がリアルに想像できて震えてくる・・・・。
■柔軟性がとにかく大事
日々のストレッチは特に大事にしているという。
前回の取材にもあった股関節の重要性。
馬に乗るうえで股関節は特に器用に使う部位であり固ければレースで身体にかかる負担が大きく変わってくるという。
ストレッチをしない日はないような話っぷりであった。
■サウナで汗取り&柔軟体操
「大浴場でみんな汗流しながら柔軟体操をしている。」(川島さん)
騎手の泊まる場所にはサウナが設置されており、重要な理由でみんなが頻繁に入っているという。
目的は減量。体重制限が厳しい世界であるため、汗取りという合言葉で騎手は日々の体重をサウナで調節している。
「ボクサーと同じような感じじゃないでしょうか?」(濱田さん)
さらに、その熱いサウナでストレッチを行うとこのとこだ。カラダの血行が良い方がストレッチはしやすい。
「もちろん食事も気を付けており、軽い体重で挑まなければいけないレースなどでは、食事の量を確実に減らします。」(川島さん)
サラッと語ってくれた部分ではあるが食事を器用にコントロールすることは多くの人が苦手としている部分。
体重制限のある格闘家もそうだが騎手たちもまた、体重のコントロール技術はかなり高いということが分かってきた。
自身の顔とかのむくみがあればすぐ気づくし、手首の太さが変わるのを握るだけで分かる騎手もいるくらい身体の変化には敏感だという。
■汗取りの間は結構暇。雑誌や漫画を読む
サウナの時間は読書の時間もあるとのこと、競馬系の漫画は大抵読んでいるそうだ。
濱田さんが好きな競馬漫画は「マキバオー」。高知編も読破しているとのこと。
また川島さんが好きな競馬漫画は「優駿の門」とのことだ。
競馬漫画は色々ある中で騎手さんが一押ししている競馬漫画は見逃せない。
それ以外の競馬漫画として「ダービージョッキー」という作品があるのだが、その中のシーンで風の抵抗についての話は印象深かったとのこと。
「どこから勝負をかけるか。心理的にはマラソンと同じようなものかもしれないです。」と濱田さんは語っていた。
競馬には差し馬逃げ馬などどの位置で走って勝利を狙うか種類がある。
その中では常に、風の抵抗を含めてマラソンのような騎手心理の変化が発生しているという。
マラソンは誰もが一度は経験するスポーツ。追いかける方と追いかけられる方。
あの感覚が毎レース騎手の中で発生しているのはとても共感できるポイントだと感じた。
■睡眠時間は不規則だが2回に分けてバランスをとる
一般の人との生活で特に違いが多く驚いたのはその睡眠時間の不規則さだ。
特に地方競馬は朝が早いとのこと。午前2時から馬の調教をしているジョッキーもいるようで、
ナイターレースなどであれば帰宅が10時を過ぎ寝るのが11時過ぎ。
そこから寝ても2時から馬に乗る人もいるので1時間程度しか寝てないケースもあるという。
しかし昼寝や仮眠を使い、身体の調子をコントロールしているとのこと。
2回、寝る事が上手くバランスをとるポイントなのだそうだ。
これは残業や不規則なシフトスケジュールで働く多くの社会人が使えるテクニックなのかもしれない。
このような状況の為、地方競馬の騎手はなかなかゆっくりとは寝れてはいないという。
「学生生活よりもプロ生活の方が生活は不規則になりますが。でも慣れますね」(濱田さん)
最初は昼間に眠いな。と感じる事があったそうだが、よほど疲れる時以外ほとんど感じなくなるそうだ。
慣れてしまいました。とその環境の事をサラッと言えてしまうのがどの業界にも通じるプロの凄さである。
■最後にメッセージ
川島さんと濱田さんに読者のみなさんへメッセージを頂きました。
川島正太郎 騎手
「競馬を見たことない人もいると思いますが、生で見ると凄い迫力があります。是非その迫力を実際に感じて頂けると嬉しいです。
そして騎手としてまだまだ精進していきますので、これからも応援宜しくお願いします。」
濱田達也 騎手
「体型を変えるには食生活も色々と工夫できる思いますので、みなさんもカラダ作り頑張ってください。
自分自身も日々トレーニング頑張っていますので、これからも応援宜しくお願いします。」
■競馬事務局からのメッセージ
中央競馬と違って、馬場とスタンドの距離が凄く近くて迫力があります。
馬ももちろん、ジョッキーさんの細かい動きが見えます。スタートも本当にスタンドの目の前です。
来年6月よりナイターもはじまりますので、是非レースを観に来て下さい。
■船橋競馬イベント情報
騎手には勝負服というものが存在しているのはご存知だろうか?
そして、競馬場では騎手が直接オリジナルグッズを販売するイベントなども行われているそうだ。
騎手とも会えるリアル情報は常に更新されているので、是非チェックして頂きたい。
http://www.f-keiba.com/event/eventlist.html
この日、レース後にも関わらず貴重なお話を聞かせて頂いた川島さんと濱田さんにお礼を告げて船橋競馬場を後にした。
船橋競馬場は気軽に入り観戦する事ができる。
そしてレースを戦っている騎手たちの心理も想像しながら順位を予測すれば、また違った面白さに出会えるかもしれない。
たとえばバランスボールに乗りながら騎手の体勢をキープしスタンドで競馬レース観戦。さらに顔に扇風機の風も当てる。もちろん強風で。
そんなエクストリームトレーニング観戦などはどうだろうか?あの1階のスタンドで筋肉バカは挑戦したい。
(文:遠藤大次郎 写真:筋肉バカドットコム)