【上半身の重心位置を考える筋トレ】ベンチプレスは3パターン!パワー強化だけが絶対正義ではない!日本一のソフトバンクのように筋トレし筋肉を付けていく際に気を付けるべき視点

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(スポーツトレーナー:瀧本修さん ※ベンチプレスの角度イメージを伝えている)

2020年12月3日 東京都渋谷区某所

プロフィール:瀧本修 スポーツトレーナー
・動き工房AXIS/代表/東京:神楽坂
・ワールドウイング /鳥取/1987-1999
インスタグラム:ability_trainer
過去記事:【瀧本 修】一流も一般も「鼻呼吸」から直す。30年の経験から辿り着いた究極トレーニング

ダルビッシュがソフトバンクと巨人の差は『フィジカル』と分析 「一定のレベルを超えると技術では抑えきれなくなる」

自身が周囲の反対を押し切って筋トレを続けてきたことについて「ほぼ逆風でしたが、自分が世界と戦うためにどうしても必要だと確信していたので続けてきてよかった」とつづり、また、「ソフトバンクはチームでこの道と似た道を通っています。才能ある選手も多いけど、とにかくフィジカル差は感じます。試合見たら感じると思いますが、フィジカルが一定のレベルを超えると技術では抑えきれなくなります」とした。
(引用:https://news.yahoo.co.jp/

2020年のプロ野球、日本シリーズはソフトバンクが巨人を2年連続の4戦4勝で撃破し終了となった。その結果に対し多くの野球ファンやプロ野球関係者、OB選手などはセ・パの力の差やフィジカルの違いについて言及。そして筋トレへの取り込みが違う点などの話題は尽きず様々な議論が巻き起こっている。

ソフトバンクが圧倒的なほどフィジカルを鍛えていることは多くの関係者が言及しており、今後セリーグでも筋トレに励み体を大きくする選手が増えていくことが予想されるが、同時に筋肉を増やし体が重くなってしまい野球におけるパフォーマンスが悪くなる選手がでてしまうことも心配される。いったいそれが起こるはなぜなのだろうか?パフォーマンスアップにおいて、「パワー強化だけが絶対正義ではない」「上半身の重心位置が重要」と語るスポーツトレーナー・瀧本修さんに話を伺った。

 

記者:ソフトバンクの選手が圧倒的に筋トレをしていた事が明るみになり、打者の体の厚みも差があったと思います。打撃力の差が筋肉視点でもクローズアップされ、やはりこれを機にみんな、とくにセ・リーグの選手は筋肉を大きくしてパフォーマンスを上げようとしますよね。

 

瀧本:結局パワーイコールパフォーマンスっていうのは、当然一理あります。絶対的に。車で考えても排気量のでかい方が速いわけですし。少しだけF1の話で、車を身体としてパフォーマンスについて例えますが、F1でも筋肉に相当する部分であるエンジン、排気量の高い方が当然パワーがあり速いです。そしてある程度エンジンは何ccまでにしましょうっていう規制が付いて、ボディ一緒にしてテクニックだけでというふうに変わってきた。そうすると今度、ブレーキングだとかハンドルだとかっていう部分や、ドライバーのテクニックに反応しやすい、相性をつくるためのメカニックの役割ってのが重要になります。

 

そこがマッチングするとレースで何勝もしますし、僕らの世代ではセナという有名なレーサーがいましたが、整備士とうまくマッチングしていれば優勝ずっとできていたわけです。やはり車体バランスや操作反応の相性が悪ければあれだけのセナでも優勝できない。っていう一応の前提がありますし、パワーだけが絶対ではなくて、ブレーキングだとかドライビングだとか反応しない車っていうのは、成績が伸びない。その車の持ってる能力とかドライバーの能力が引き出せないわけです。

 

記者:なるほどです。パフォーマンスにおける操作性や反応は確かに重要な要素ですね。

 

瀧本:結局、野球のバッティング動作でいうと、インコース(インサイド)も打たないといけないしアウトコースも打たないといけない。ストライクゾーンは大きくみても9コースあります。その中でも自分の得意なところにばっかり好きな球が来ればいいんですが、来ないケースの方がプロは多い。そこで、トップ選手になると、コースの順番が1.2.3.4…9と分かれている中、バッターが4番目が得意ならば、投手は4番目のコースを的確にかなりの精度で外して投げてくるわけです。そうするとそのバッターはいつも打てないってことになってくるわけです。

 

■上半身の重心位置を考えてトレーニングするべき。その人が得意とする角度でしか腕立て伏せとかベンチプレスをしない1パターン問題

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※瀧本さんは重心は上半身と下半身の2か所に分けて考えることができるという

瀧本:だからその投球に対応しようと思うと、インコースだと肩を外旋運動させて、脇を締めて打たせる可動域と筋力がいるわけです。アウトコースだったら肩でいうと内旋気味にしてアウトコースに対応するとか。同じストライクゾーンでも、身体の上半身の重心部分の重心を低くする高くするだけではなく、腕の折りたたみとか技術要素もある。それらの動作が上手くできない選手っていうのは、やはり球がバットに当たったときに苦手なコースでは打撃(スイングスピード、長打力)が弱くなります。

 

そして弱いコースの打撃結果だけみると、指導者側や本人は胸の筋肉がまだ弱いなって思うわけですが、そのときに選択として取るのがだいたいベンチプレスとか腕立て伏せになります。そして問題となるのが、結局その人のやりたいようにやってると、その人が得意とする角度の1パターンしかでしか腕立て伏せやベンチプレスをやらないってことなんです。

 

記者:教科書通りのベンチプレス、ひじの角度で行うペンチプレスでは問題ありということでしょうか?

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(通常のベンチプレスの腕の角度、上半身の重心位置はみぞおちあたりになる。)

瀧本:説明します。だいたい真ん中くらいに下ろして、一応手も真っ直ぐにして真っ直ぐ下ろしましょうになるんですけど、野球のバッティング動作で考えると、肩の内旋、外旋が重要。腕の脇を締めたり、肩を広げるっていうのが絶対的に入ってきます。解剖学的にいうと外旋運動という脇を締めた、腕立て伏せとかベンチプレスのイメージです。バーベル下ろす位置もみぞおちの辺になってくるわけですが、するとバッティングでいうとインコースを打つときの上半身の操作イメージに近くなります。

 

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(肩の外旋:上半身の重心位置は少し下にくる。脇を締めて、インコースを打つ際の筋肉を強化するベンチプレスのイメージ)

記者:なるほど、上半身の重心をかえた筋トレが必要。脇を締めた腕立て伏せとかベンチプレスはインコースをさばく動作の筋力強化なんですね。

 

瀧本:はい。上半身の重心の位置も少し下がり低くなるのですが、そうするといわゆるインコースの球を打つような操作イメージになると思います。逆に内旋っていうちょっと脇を広げたような感じで、鎖骨の下くらいにバーを持ってくると、アウトコースを打つようなイメージの操作、筋トレになります。なので、上半身の重心を上・真ん中・下と考え、外旋内旋含めて同じメニューを行う。例えば50kgで3通りの重心位置でベンチプレスが同じように出来ればバランスがいいといえます。でも真ん中50kg・上50kgで、脇を締めて上半身の下の重心位置でやるベンチプレスが30kgでした。となったらインコースで使う筋力はまだ弱いと判断できたりするわけです。

 

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(肩の内旋:上半身の重心位置は少し上にくる。脇を広げて、アウトコースを打つ際の筋肉を強化するベンチプレスのイメージ)

 

記者:バッティングのコース別に考えた筋トレ方法のアレンジはとても面白いですね。細かい肩や手の角度やウェイトを含めた上半身の重心位置を変えた筋トレ方法はまだあまり普及していない気がします。

 

瀧本:結局、肩関節・腕を外旋しようとするっていうことは、当然肩甲骨の下方回旋してくるわけですが、ちょっと回ってくるっていうか、前側に来るのですが、肩甲骨と腕の動きっていうのは比率が連動します。例えば1:2で動くとか、肩甲骨が1動けば肩関節が2動くっていうように、肩関節が2動いて肩甲骨が動かないってなってくると、当然肩に負担がかかるから、肩肘とかにも負担がかかります。

 

そのため腕を軽やかに動かそうと思えば、当然腕を支えてる肩甲骨も回旋運動した方がいいわけです。揺らぐっていうか振れるっていうか。結局、腕の内旋外旋していくと当然肩甲骨も前・後・前・後って動くので、その肩甲骨の柔らかさっていうのも、どう柔らかいかっていうことが次のポイントになってきたりします。

 

 ■バット操作は肩甲骨の下角部が重要。一番下の方が柔らかいと振り幅が大きくなる

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瀧本:肩関節の柔らかさと肩甲骨の柔らかさはイコールなんですが、肩関節の柔らかさをつくるために肩甲骨のどこが柔らかいほうがいいかって言うと、肩甲骨の下角部。一番下の方が柔らかい方が振り幅が大きくなる。肩甲骨の下が柔らかい方は筋肉的にバッティングに関わる次の動作から考えても、肩甲骨の下部がいい。肩甲骨の下部っていうのは、大円筋・後背筋だとか、付着してるところになるので、肩甲骨の下部が堅いと後背筋も動かしずらかったりします。

 

前鋸筋 - 【上半身の重心位置を考える筋トレ】ベンチプレスは3パターン!パワー強化だけが絶対正義ではない!日本一のソフトバンクのように筋トレし筋肉を付けていく際に気を付けるべき視点

(出典:wikipedia

瀧本:また、肩甲骨が前にギューっとスライドするときに、あばらのところにある前鋸筋(ぜんきょきん)というのがあります。それが堅いと肩甲骨が横にぶれて、前外転内転っていう平行に前・後ろと動いてしまう。前・後ろに動かしながら肩甲骨が回旋してくるっていう方が、肩甲骨の動きやバッティングのパフォーマンスを出すには良い。そのため肩甲骨を的確に動かしていくためにも、腕の内旋外旋っていう動き行い、しっかりと意識して前鋸筋(ぜんきょきん)の稼働含め鍛えた方が良いです。

 

■ベンチプレスを3パターン、上半身の重心を3箇所に分けて強化

記者:少し話しが戻ってしまうのですが、ベンチプレスを3パターンやると上半身の重心が少し3箇所に分かれますよね。それによってやっぱり、ピッチャーが投げてくるスピードとか変化球とかタイミングの違い、球種でいうとチェンジアップというのもあるのですが、その辺の球種でタイミングが変化してきたときに、バッターが操作できる上半身の重心位置を3パターン強化して持ってることによってコースだけでなく変化球にも対応しやすくなるってことにはなるのでしょうか?

 

瀧本:結局、その重心っていうのは、ものが一番動きやすい、どの方向にも動きやすい中心点って考えになるんです。軸と同じ考えですね。当然腕が上に上がれば上半身の重心も上に上がるし、腕が下がれば上半身の重心も下がってくるわけです。だからそのときに肩甲骨が動かないで腕だけが下がっても、案外上半身の重心位置が上のままだったりすると、まず動作のズレやパフォーマンスに違いがでるっていうのはあります。

 

記者:つまり、バッティングにおける上半身の重心位置が3個あったら、例えば上半身の下の部分の重心位置で振る動作が遅い・弱い選手だった場合。上の2個の重心位置のバッティングは強いんだけども、3個目の上半身の下の重心で対応しなければいけない変化球(例えばチェンジアップ)だった場合は弱いみたいな。スイングスピードもその重心で動いたときは苦手となり、遅くなるって感じなんでしょうか?

 

瀧本:上半身の重心が下の部分に限っていうと、腕で言うと外旋して脇を締めた状態のスイングスピードは当然遅くなる。自己評価する方法としてはスイングを測るときに、インコース・真ん中・アウトコースっていうイメージでたぶんスイングテストをしていくと、当然ヘッドスピードは速い遅いとか、あと加速度計などのスイングスピードや波形が出る器具とか付けてやれば当然わかりますし、床反力の波形も良い、悪いだろうなっていうのはわかってくると思いますよ。

 

記者:なるほどです。確かにあまりないですね。バッターがアウトコース・真ん中・インコースで、スイングスピードを見る、測るっていうのは意外とやってない気がします。

 

瀧本:一番速く振れるコースでのスイング、本人がやりやすいところでスイングを測定するのが普通ですからね。だから単純にもっと科学的っていう、トレーニングを取り入れるのであれば、そこの分析はしないといけないだろうなっていうのはありますよね。

 

記者:当然セリーグの選手も激しく筋トレしていると思うんですけど、パワー自体を付けていくのもそうなんですが、そういうコース別のスイング力に直結する上半身の重心操作や動作の違いを考えてウェイトトレーニングをいろんな方向からやること、それに応じてアウトプットとなるスイング速度の測定。アウトコース・真ん中・インコースでちゃんとそれぞれが成長しているかどうか、どこか弱いところがないか見ていくということを両方やると、非常にいいという事ですね。

 

瀧本:そうです。だからインコースのスイング強化と筋トレを合わせるのであれば、いわゆる脇を締める筋トレになります。たとえば外旋して腕立て伏せをしといて、インコースのトスとかTとか打つ練習もした方がいいですし。アウトコースのスイング強化ならば当然普通の内旋をして肩をちょっと張ったような腕立て伏せやったあとに、高めのアウトコースよりの球を打つ練習した方がいいとかもありますね。ベンチプレスもトスも、やはり最低でも3パターンはやった方がいいと思いますね。

 

(取材・文:編集部)

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