【特別コラム・舟橋立二さん】アスリートが復帰の際に一番求めるものは?
*******************************************
舟橋 立二さんのプロフィール:
(CSCS, JATI-ATI, FA Medical Level2)
日本に帰国し、日本大学バスケットボール男子・女子部のヘッド・トレーナーとして日本一(男子のみ)を経験する。
その後、三菱重工相模原ラグビー部にて5年間ヘッド・トレーナーを務め、
現在はプロバスケットボールチーム東京エクセレンスのメディカル・スーパーバイザーとなり、
2013-2014シーズンで優勝に貢献する。
また玉川大学サッカー部のストレングスコーチとしても活動する。
*******************************************
大きな怪我をし、長期のつらいリハビリを乗り越えてやっとのことで練習や試合に復帰するとき、
選手が一番求めているものは何でしょうか?
つい2、3日前にトップアスリートとお話をしている中に「重要な言葉」を話して頂きました!
こんばんは、スポーツトレーナーコーチング・コーディネイター(STCC)の舟橋立二です。
◆ 選手がリハビリで学ぶもの
身体の正しい使い方?再発しないための筋力?
ここでは、技術的なことは述べません。
選手がリハビリを始めるにあたって感じていることをまずは考えてみましょう。
彼らの心理状態は、「怪我への後悔と悲しみ」、「痛みへの恐怖と不安」、「フラストレーション」があり、
いきなりリハビリに対して積極的になれる人は少ないかと思います。
つまり、「よし!良いリハビリさせて元気にさせるぞ!」というトレーナーとは、スタート地点が心情的に違うことを理解する必要があります。
この点は病院でリハビリを見ているPTの方とは、もしかしたら少し違う点かもしれません。
病院でスポーツ傷害のリハビリをスタートするときにはある程度覚悟を決めてポジティブになっている人が多いと思います。
(もちろん、怪我やその個人によって差があったり、ネガティブの人もいるかと思います。)
スポーツ現場で怪我をした瞬間を見て、怪我評価を行い、病院に帯同し、
手術などを行う過程すべてを見ているとよくわかります。
選手がリハビリをしていく過程でメンタル面で変化していくことをトレーナーは感じることが出来るもの。
そこがリハビリ期間中に学ぶことの出来る大きな要素の一つです。
◆ リハビリでのトレーナーの行動
怪我をし、リハビリの当初またはスタート前は「怪我の不安や悲しみ」があることが多いので、
一緒に悲しむことも重要です。決して間違って頂きたくないのは、《同情》ではないということです。
このように書きますと演技のように聞こえますが、実際にチームに一緒に戦ってきて、
怪我の瞬間を見ますと本当にすごく悲しい気持ちになります。
それを隠す必要はないと考えます。
このタイミングに、「大丈夫だよ、早くリハビリしよう!」と楽観的すぎると「あいつ、俺の気持ちも知らないで・・・」となる場合があり、信頼関係を失うきっかけになるかもしれません。
悲しいが、それを乗り越えるためにリハビリを一緒に頑張ろうというスタンスが選手を独りにさせない手段かもしれません。
もちろん、その後は選手の心理状態は常に変化します。
それに合わせてトレーナーも行動を考えなければいけません。
痛みがあるからそのリハビリをストップさせる?
時には、《しりを叩く》必要もあるときがあります。
これも選手の心理状態に合わせて行った方が良いでしょう。
◆ 復帰の際に一番求めていることとは?
このようにリハビリを進めて行き、復帰時期になった時の選手の心理状態は、
「再発したらどうしよう?」「痛みでないかな?」「本当に復帰して大丈夫なのかな?」といったことが少なからずあります。
最後は、今まで一緒にリハビリを頑張って来たトレーナーの一押しが必要になります。
《背中をフィジカル的にもメンタル的にも押す》ことです。
その為にリハビリも段階的にあげていき、スポーツ特有性を考え、さらにポジションなども考えてメニューを作成し、段々と自身を回復させます。
選手にとったら自分が行っていたプレイを徐々に出来るようになると相当の自信になります。
つまり、「50mが以前より早く走れるようになった」より「相手と競ってヘディングでクリアしても痛みや不安がない」の方が自信になります。
スポーツ特有性にはそういった効果もあると信じています。
話が少しずれましたが、メンタル面では、不安になっている選手へ少しでもそれを取り除くように選手とコミュニケーションを取ることが必要だと思います。
「ここまで頑張ってきたのだから、思い切り頑張れ!」単純ですが、この一言だけでも選手は勇気を持てます。
不安があるまま復帰することでパフォーマンスにも影響しますが、2次的傷害を生む可能性もあります。
フィジカル的にもメンタル的にも準備ができている状態を作り出すことで、本当の復帰が出来るのではないでしょうか?
その為には、リハビリ初めまたは始める前から選手の心理状態を把握し、
それに合わせた言動・行動、そして復帰での心理的サポートが大事だと考えます。
もちろん、リハビリの技術、評価などは最低限トレーナーが身に付けないと行けないことです。
そのトップアスリートとの会話の中で、良いトレーナーとは、
「復帰のときに不安にならないようなリハビリ作り、そしてその時の信頼感」が必要と話しておりました。
そのような点からも選手はトレーナーを評価しています。
☆最後までお読みいただき、ありがとうございました☆
参考図書:Richard H. Cox “Sport Psychology: Concepts and Applications” McGraw-Hill, 2007.