【百本コラム】六本目:『足関節の構造と機能』
筋肉バカドットコムを御覧の皆様!こんにちは!中村(なかむら)知広(ともひろ)です。
このコラム、なんだか漫画の話ばかり書いていて、コラムの前半までしか読んでくれていない人には漫画のコラムだと勘違いされているような気がしてきました。
いかんいかん。
僕のコラムのテーマは、あくまでもトレーニング/機能解剖学/運動連鎖などの『トレーニング科学』でございます!
お間違いの無いようにお気を付け下さいませ。
………と前置きしたからOKでしょう。
またしても漫画の話から入ります!
皆さん、漫画『るろうに剣心』は読みましたか?
1994年〜1999年にかけて週刊少年ジャンプで連載されていた和月伸宏さんの漫画です。
明治初期を舞台に繰り広げられる剣客バトル漫画。
バトル漫画の王道でありながらも、時代劇なのに格ゲーやアメコミのエッセンスが入っていて、少年にとっては食い付かずにはいられない面白さがあります。
僕のお気に入りキャラクターは、主人公の剣心ではなく、剣心のライバルポジションである斎藤(さいとう)一(はじめ)です。
『悪・即・斬』
『半端な強さなど無いに等しい 口先だけの偽善者の言葉など胸くそ悪くなるだけだ』
『ただ生きるだけなら家畜同然 誇りも尊厳も必要ないからな』
『無論 死ぬまで』
斎藤一というキャラクターの魅力は一貫した美学にあります。
まるで牙突のような生き方!(牙突ってのは斎藤一の必殺技で、一直線に突進して放つ突きの事ね)
剣心はオーソドックスな成長型主人公であるため、迷いや葛藤といった部分が多く描かれています。
しかし、斎藤一には微塵の迷いもない。
己の正義を全うするのみ。これが斎藤一の美学。
僕も斎藤一のように己の正義を貫いて生きていきたいものです。
『無論 死ぬまで』ね。
ところで美学というのは、美の本質や基準や価値などについて哲学する学問の事なんだそうです。
これって凄く大事な事だと思うんです。
何故なら、美の定義付けは人間の進化/進歩/成長の方向性を決める事に繋がるからです。
何事も方向性が定まっていないと迷走してしまうものですからね。
運動連鎖に美学を適用すると、「合理的な運動連鎖は美しい」という答えに辿り着くはずです。
何故そうなるのか?
レッグヒールアングルを例に挙げて解説します。
【本題】
『足関節の構造と機能』
【レッグヒールアングルの解説】
レッグヒールアングル(以下LHA)とは、踵の骨(踵骨)の直立線と下腿の直立線が交わる角度の事。
ヴェルナー・プラッツァー(著) 平田幸男(訳) 分冊 解剖学アトラス 1 運動器より
LHAは0度が理想です。(牙突のように一直線!)
しかし扁平足などの足部の代償がある人は踵骨が内側に倒れ込んでしまっていたり、逆に外側に倒れ込んでしまっていたりしいます。
これによって力学的なロスが起こる事は、誰の目にも明らかです。
そして更に、誰の目にも明らかなのは「LHAの崩れは美しくない」という事。
これはLHAの崩れに限った事ではなく、全ての代償動作に言える事でもあります。
美学的に解釈すると、生物にとっての最優先事項は自らの遺伝情報を残す事であり、よって美的感覚における最も根源的な要素は
〝合理性〟であると言えるからです。
もし、外反母趾や扁平足やKnee in Toe outや猫背などの代償動作に美しさを感じる人がいるとしたら、それは個人のフェティシズムの問題と考えられます。
このように美学の観点からも、代償動作のマイナス面が挙げられるわけです。
LHAが崩れている人は改善したくなりましたよね?
【LHAの崩れの原因】
そのためには、まず基礎知識の共有から入る必要があります。
ここから専門的な話になりますが、LHA改善のためにも高いモチベーションを持ってお読み頂きたいと思います。
LHAの崩れの第一の原因は扁平足などの足部の問題です。
しかし、足部の問題に関しては以前のコラムで書きましたので今回は省略します。
「?」となったら、以前のコラムを読み返してみて下さい。
今回は、LHAの崩れのもう一つの原因である足関節の問題を挙げて解説します。
よって、まずは足関節に関する基礎知識の共有から始めます。
足関節とは足首の関節の事であり、足部と下腿を繋ぐ関節を指します。
足関節は複数の要素が絡み合ったややこしい関節です。
ここでは足関節を構成する主要素である距腿関節(きょたいかんせつ)について少し掘り下げて解説していきます。
【距腿関節(きょたいかんせつ)の解説】
距腿関節は、距骨と頸骨と腓骨から構成される関節です。
距骨とは、足根骨の一番上に乗っている石コロのような骨。
頸骨とは、脛の骨。
腓骨とは、脛の骨の外側に並んでいる細長い骨。
頸骨と腓骨の合わさった下の部分が、距骨とドッキングして距腿関節を構成しています。
距腿関節の動きは主に背屈/底屈であり、〝遊び〟として回外/回内や外転/内転などが生じます。
ヴェルナー・プラッツァー(著) 平田幸男(訳) 分冊 解剖学アトラス 1 運動器より
この関節の〝遊び〟は無くてはならないものなのですが、場合によっては不慮な〝遊び〟が問題となる事があります。
距腿関節は滑車とレールの関係にある事によって、スムースな背屈/底屈を生じさせます。
不慮な〝遊び〟は、この滑車とレールの関係を崩してしまうので、背屈/底屈の可動性が阻害されてしまうのです。
【背屈/底屈の可動性が阻害された場合】
背屈/底屈の可動性が阻害されてしまうと、どーなるのか?
具体的に言うと、深くしゃがみ込むようなボトムスクワット動作の際に足関節の背屈が不十分となり、踵が床から浮いてしまうような代償動作が生じます。
このような代償動作を日常的に多用していると、膝へのストレスや腰へのストレスが重なり、障害に発展してしまいます。
もし障害に発展しなかったとしても運動効率は著しく低下し、疲れやすくなったり、トレーニング効果が上がらなかったり、競技パフォーマンスのロスなども免れません。
【何故〝遊び〟が発生してしまうのか?】
では、何故このような不慮な〝遊び〟が発生してしまうのか?
その原因の大部分を占めるのが、足部の代償動作です。
前回までのコラムで述べた通り、足部が本来の機能を果たさず、靴の機能にばかり頼ってしまっている状態ですね。
例えば、外反母趾や扁平足がこれに当たります。
足部の機能であるトラス機構/ウィンドラス機構などが機能不全になると、靴の機能だけでは代償が不十分なとり、やがて足関節の代償を招きます。
足関節が担わされた代償が、距腿関節の不慮な〝遊び〟を誘発するのです。
では、どうすれば良いのか?
【改善方法】
まずは足部の機能を健全化する事が必要です。
つまり足部の運動連鎖トリガーである足趾の握り込みを習得する事。
次に足部と足関節を連動して動かせるように練習する事が必要です。
つまり足趾の握り込みと共に足関節の背屈/底屈が出来るように練習する事。
■ 足趾の握り込み
要するに、いつも通りの Just Do It!
いつだって結論は Just Do It!なんです。
Just Do It.の直訳は、
「行動あるのみ」
「いいからやってみな。」
「とにかくそれをしろ」
「やるっきゃない!」
このような動作を習得できれば足関節の問題は全て解決!
LHAも牙突のように一直線に!
それどころか全身に波及している多くの問題も連鎖的に解決!
しかし現実は甘くはなく、これらの修正の難易度は非常に高い。
毎日毎日、何回も何回も、繰り返し繰り返しやって、やっとの事で親趾が開くようになるまで1ヶ月以上かかる事もあります。
前回までのコラムで述べた通り、神経支配比の問題や代償動作を含んだ体性反射の問題があるので、難しくて当然なのです。
だからこそ Just Do It あるのみ!
「難しい」ってだけであって、「不可能」ではありません!
さぁ! Just Do It!斉藤一に言わせれば「悪・即・斬」です!
もし、これまでのコラムで解説してきた部分を全てクリアしている人がいるとしたら素晴らしいです。
そのような人に向けてもコラムを書いておりますのでご安心ください。
今度は、より発展的な話をしていきたいと思います。
と言う事で、次回は『足部の運動連鎖トリガー応用編』です。
乞うご期待!
(文:中村 知広)
中村さんのコラムで疑問や何か知りたい事などがあれば、
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