【百本コラム】四本目:『随意運動と不随意運動』

16048 - 【百本コラム】四本目:『随意運動と不随意運動』

 筋肉バカドットコムを御覧の皆様!こんにちは!中村(なかむら)知広(ともひろ)です。

先日、僕のコラムを読んで頂いた方から感想をお聞きする事が出来ました。

このコラムシリーズは専門的な部分をカッ飛ばして書いているので、一般の方が読んでいて、どー感じるのか?

疑問でした。

それが何と!意外にも好評! 「どーゆー部分が良いんですか?」と訊ねてみると、「例え話や比喩表現が面白い」との事。

なるほどなるほど。 フィードバックを活かして、今後のコラムに磨きをかけていきます。 100本目に近付く頃には、どんなコラムになっているのかな?

日々精進!行住坐臥! このコラムを御覧の皆様!是非フィードバックを下さい!

 

さ!今回のテーマは『随意運動と不随意運動』です。

 

【本題】

 まずは言葉の意味から説明していきます。

随意運動とは、自己の意思や意図に基づく身体運動の事。

不随意運動とは、自己の意思や意図に基づかない身体運動の事。

随意運動は説明するまでもありませんが、例えば、このコラムを読む為に起こした動作は全て随意運動ですね。

不随意運動は、心筋(←心臓の筋肉の事だよ)の収縮・横隔膜や胃腸の伸縮・消化液の分泌などの内臓の運動・反射による運動などなど、意外と沢山あります。

 

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 梅干しを口の中に入れた事を想像しただけで唾液が分泌されるのも、一種の不随意運動なんですね。

ちなみに、心筋などの内臓系の筋肉は『不随意筋』と呼ばれ、主に自律神経の支配を受けています。

よって、自分の意思で心臓を止める事は出来ないわけです。(…承太郎はスタープラチナで自分の心臓を止めていましたが…)

 

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(参考:きよの漫画考察日記278 ジョジョの奇妙な冒険第28巻

 

 ここから更に、不随意運動の中でも〝反射〟について掘り下げて解説していきます。 まずは言葉の意味から。

反射とは、外的刺激が脳に伝わる前に脊髄などで反応し、意思と関わりなく起こる身体運動の事。

例えば、誤って熱いものに手が触れてしまった時に「熱!」と感じると同時に既に手が引かれているのは、反射の作用です。

ちなみに、このような反射を『屈曲反射』と言います。 危険から身体を回避させる為の反射です。

反射は他にも色々な呼び方や分類の仕方があって、ちょっとややこしいです。

出来るだけ分かりやすく、色々な反射の分類について解説してみましょう。

 

【反射の分類について解説】

 反射は、無条件反射と条件反射に分類する事ができます。

無条件反射とは、上記の屈曲反射のような〝先天的な反射〟の事です。

無条件反射は、他にも把握反射や対光反射など沢山あります。

 

 ちなみに、把握反射とは赤ちゃんが手に触れた物を握る反射の事で、対光反射とは光が目に入ると瞳孔が収縮する反射の事です。

条件反射とは、上記の梅干しのケースのような〝後天的な反射〟の事です。

『パブロフの犬』が有名ですね。 条件反射は、練習や習慣や刷り込みによって構築されていきます。

「パブロフの犬」とは – 犬にエサを与えるときに必ずベルを鳴らすようにしたところ、エサが無くてもベルを鳴らすと犬がよだれをたらすようになるというもの。 パブロフ博士が1902年に発見。

http://d.hatena.ne.jp/keyword/パブロフの犬

 

他にも、姿勢反射という分類もあります。 これは姿勢を調整・保持する為の反射です。

ただ立って歩くだけの動作が、いかに複雑な姿勢反射によって成り立っているのか?

未だに辿々しい二足歩行ロボット達を見ると分かります。

まだまだ、体性反射という分類もあります。 これは反射が身体運動として現れるもの全てを指します。

つまり、ここまで述べてきた反射の中で〝心筋や内臓の収縮〟〝梅干しのケース〟〝対光反射〟以外の反射は、全て体性反射に分類されるわけです。

 

 さてさて、随意運動と不随意運動、更には反射について、何とな~く概要を掴んでもらえたかと思います。

そもそも何故、これらの解説をしたのか?

 


 

 

 前回のコラム(三本目:『足部の運動連鎖とトリガー』)では、足部の運動連鎖トリガーである〝足趾の握り込み〟について解説しました。

足趾の握り込み=全MP関節の伸展と全IP関節の屈曲でしたね。

全MP関節の伸展と全IP関節の屈曲によって足部アーチの剛性が高まり、全身へ運動連鎖が伝わっていくわけです。

しかし、この全MP関節の伸展と全IP関節の屈曲という単純な動作が意外と難しく、過半数の人が足趾を握り込めない。

 

何故なのか?

 

これを解説する為に、今回の基礎知識の共有が必要だったのです。

では、ここから〝動作を作る事の難しさ〟について解説してみましょう。

 

【動作を作る事の難しさ】

 動作を作る難しさは、神経支配比に関わってきます。

神経支配比とは、ある神経繊維が支配する筋繊維の比率の事。

例えば、神経繊維:筋繊維=1:150だとすると、1つの神経繊維が150の筋繊維を収縮させるため、大きな力を発揮できる代わりに繊細な動作を作る事は難しくなります。

このような場合を『神経支配比が大きい』と表現します。

逆に神経支配比が小さければ、大きな力を発揮できない代わりに繊細な動作を作る事が出来ます。

太ももの筋肉は神経支配比が大きく、指先の筋肉は神経支配比が小さいわけです。

 

 その他、動作を作る難しさに関わる要素は、体性反射の習得度です。

つまり、練習や習慣や刷り込みが充分になされている動作は不随意動作として難なく出るが、そうでない動作は随意動作として作り出さなければならないわけです。

稀に、初見の難しい動作を即座に真似できる人がいますが、これは天才の部類ですね。

更に、動作を作る難しさに関わる要素は、理想的でない体性反射です。

これはつまり、理想的でない動作の練習や習慣や刷り込みがなされてしまっているパターンです。

不随意運動として動作は出るが、それが理想的な動作ではなく、随意的に修正しようにも体性反射プログラムが出来上がっていて、なかなか思い通りに身体が動かせないという状態。

自分の身体が自分の身体じゃないような、とても歯痒い感覚に陥る厄介な状態です。

以上の三つが、動作を作る事の難しさの要素です。

 

これらを踏まえて、足趾の握り込みの難しさについて解説してみましょう。

 

【足趾の握り込みの難しさ】

二足歩行である人間は体重を脚だけで支えなければならないので、四足歩行の動物と比べて、脚の神経支配比が大きいのです。

つまり、大きな力を発揮できる代わりに繊細な動作を作る事が難しいわけです。

猿は足も手のように器用に使いますが、人間には出来ませんよね。

これは、「人間の脚の構造が二足歩行に特化しているから」でもあります。

よって、単純なはずの足趾の握り込みが意外と難しいわけです。

 

 また、人間は靴を履いて生活するので、本来あるべき足部の機能が発達していない人が非常に多いのです。

靴は衝撃の吸収も、床への力の伝達も、足首の固定も、至れり尽くせり担ってくれます。

これにより、足部の機能が未発達のままとなってしまうケースが多いわけです。

本来あるべき足部の体性反射の習得もなく、靴の機能ありきの理想的でない足部の体性反射が習得されてしまっている。

このようなケースの人にとって、足趾の握り込みは全くの未知の領域。

余りにも動かせないため、「難しい」と感じる以前に「出来るわけがない」と感じる人もいるようです。

以上が、足趾の握り込みの難しさの要因です。

 

では、どーすれば足趾の握り込みが出来るようになるのか?

 

答えは単純明快。

 

 


 

【答え】

 人体の構造と機能に即した理想的な動作を、気が遠くなるほど反復練習する事

すると、神経が促通して随意的に理想的な動作を作る事が出来るようになり、やがて、理想的な動作が体性反射に組み込まれて条件反射として動作が出てくるようになります。

 

「そりゃそーだろ!」という結論ですが、これが真理です。

気が遠くなるほどの道のりかもしれませんが、これが最短距離の近道です。

 

 では、この近道を迷わずにまっすぐ通るためには何が必要か?

それは〝人体の構造と機能に即した理想的な動作〟を理解する事

これについては色んな人達が色んな事を言っていて、一致した見解というものは存在しません。

個人差やシチュエーションの違いなどが多種多様に関わってくるわけですから、一概に言う事は確かに難しいと思います。

しかし、僕はこういった現状に違和感を感じます。名探偵コナン君が言うように「真実はいつも一つ!」なんです。

複数の主張や見解が存在するという事は、誰も体系的に捉える事が出来ていないという事。

木を見て森を見ずor森を見て木を見ずの人達が多い。

 

〝人体の構造と機能に即した理想的な動作〟を語る上では、まず理想的でない動作を語らなくてはなりません。

理想的でない動作の事を総称して『代償動作』と言います。

 

 このコラムでは〝運動連鎖の体系化〟も狙っています。

皆さんに一つ一つを解説しながら、それらの繋がりを示していく。

気が遠くなるほどの道のりですが、どうぞヨロシク!

 

という事で、

次回テーマは『代償動作ってなぁ~に?』です。

 

乞うご期待!

 

(文:中村 知広)

 

 中村さんのコラムで疑問や何か知りたい事などがあれば、

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