【第2回:筋肉で読む本】空白
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言葉はやっぱり「狭めるもの」なんですよね、どうしても。ちょっと心に響くセリフが出ると、多くの人がそれに反応する。それは結局その人たちが「そう理解したい」ということであって、決してそういう意味のセリフではなかったりすると思うんです。(P128)
皆さん、筋トレしてますか?
井上雄彦といえばやはり「スラムダンクの作者」というイメージも強く、常日頃から筋肉(マッスル)のことを考えている筋肉バカドットコム読者の皆さんであればきっとゴリこと赤木剛憲が自室でダンベルトレーニングに励んでいる姿を見て自身の筋トレに対するモチベーションを上げたりすることもあったであろうと思われますが、今回ご紹介させていただくのはそんな井上雄彦の、主にバガボンド休載期間における氏の考えに触れることができるインタビュー集です。
インタビュー集というフォーマットは「ちょっとなにかしらの軽い本を読みたい気分だわ」という時に非常にオススメで、なんといっても口語主体なのでスラスラ読めます。これは非常に大事なことで、「本を読む」という行為を行うに当ってそれ自体のハードルが高いと「読書自体をしない」という状況に陥ってしまうこともありえます。気構えることなく、スマホのソシャゲでちょっとした時間を潰すのと同様に本を読もうと思った際には、この本に限らず、インタビュー形式の本を第一選択肢として考えてみるということを推奨させていただきます。
バガボンドという漫画のテーマは「身体」とのことで、この時点でもう筋肉好きとしてはバガボンドは読むしかないのですが、漫画を漫画として読んだ時に、どうしても読者側で拾い零してしまう部分は出てきてしまうはずで、その中でこういった「漫画ではなく、言葉で説明してくれる」というものが副読本として存在していると、作者は何を伝えたがっているのかの理解に役に立ち、非常に助かります。その一方で、テーマが「身体」である以上、「言葉」というものは「身体」の真逆に位置するものである、という前提が井上雄彦にはあるわけで、その上でのこの本での語りなわけで、このあたりにものすごい面白さが感じられる1冊だと思います。
最後に違った角度からの話もひとつ。
インタビュー集という形式の本は読みやすさという点では非常に強みがあるんですが、本全体としてのクオリティがインタビュアーの資質に大きく左右されてしまうという側面がある、ということも、この本を読むと体感してもらえるのではないかなと思います。この本のインタビュアーは井上雄彦のファンなのであろうと思われるんですが、それ故にか自分の見解を語りすぎるような傾向があって、「いや、こっちは井上雄彦の言葉を聞きたくてこの本読んでるんですけど」という気分にさせられる箇所が何箇所か見られました。いくら筋肉を鍛えていたとしても、会話の途中で突然「俺の胸筋見てほらほらピクピクさせられるよ!」などと言い出したりしたら相手に違和感を与えてしまうことになりかねませんし、コミュニケーションに必要な能力、コミュニケーションに必要な筋力、というものも意識して鍛えていきたいものです。
この本を読む際にはこちらの曲も合わせてどうぞ。
(文:マッスル剛志)